(今日はヤバく長いです)
今日は"説明"について話したいと思う。
物事を説明するのは難しい。
特に経緯を含んだ事実や論証を必要とするもの(数学等)は非常に難しい。
しかし私は嘗てある方からそういったものの説明において「新聞の論法」が有効であると聞いたのを今更ながら思い出した。
知っている方もいるだろうが新聞記事の多くは「見出し→概要→本題」という構成だ。
これは最も良いとされる形らしい。
つまり見出し・概要(あらすじ)で予め本題(詳細)について読者に前知識を与えることにより本題を読んだ時の理解度を高めることが出来る。
具体的には何でもいいから新聞を取って一面を見てみればわかるだろう。
一応私の手元にある今日の朝日新聞夕刊の一面にはこうある。
 -見出し-
ヒューザー営業停止へ
耐震偽装「住民補償に専念」

 -概要-
耐震強度偽装事件で、マンション建設主のヒューザーが営業活動を停止し、会社は住民への被害補償だけを行う(中略)と小嶋社長は話している。
 -本題-
同社が16日までにまとめた(以下略)
 
事実関係が複雑な社会問題などは詳細を読んでいきなり理解するのは難しい。
だから一番の根幹を予め知る、又は詳細を読んでいて混乱した時に頭を整理するツールとして見出し・概要が有効なのだ。
次に新聞の論証のスタイルをとらないものについて見る。
つまり見出し・概要が抜けているものだ。
いきなり本題を書き始められると読者はその話が結局何処に落ち着くのかわからずに混乱しやすい。
それだけならまだしも話のヤマに来てもそこが話のヤマだと気づかず結局理解度が浅いまま終わることもある。
話題によっては能力的に読めない人もでかねない。
では見出し・概要が欠けた例として、私の手元に昔使った中2の数学の教科書があるのでそれを使ってみよう。
中学数学のヤマの一つ、図形の証明の導入はこうなっている。
まず問がある。
「四角形ABCDでAB=AD,BC=DCのとき、∠ABC=∠ADCといえるでしょうか」
それの証明が次にある
そして次に証明と言うものを仮定と結論という2つのキーワードを用いて説明している。
まぁ論証に間違いはない。
しかし先ほど言ったようにこれは見出しと概要が抜けている。
一応見出しはページの頭に"証明"となっているがそんなもの読んでも何の役にも立たない。
そもそも証明がなんだかわからない人間にとって"証明"という見出しは内容を伝えるものではないのだ。
また、最初に具体例が来ており、本題前の概要にあたるものがない。
何も具体例が悪いと言うのではない。具体例を通さねば理解が深まらないことだって多い。
しかし見出しと概要がないためにこの説明では多くの中学生が理解できていない。
簡単な問題は解けるが証明というものの実体を理解していないが故にある程度の問題になるとついていけなくなってしまう。
だから説明をする者は見出し・概要を理解し、それを有効に利用できなければいけない。
では概要というものを説明しよう。
一言で言えば概要とは本題を簡易的に示すものである。
つまり、概要は本題の全体を説明するものであって一部を説明するものではない。
具体例などは一部に含まれるので概要にはならない。
つまりここでの概要は本題の中軸を担う仮定と結論というキーワードとその相互関係を説明するのが適当と考えられる。
或いはキーワード抜きに証明そのものをざっと説明するのもアリだが、それだと長くなって概要の役割が半分しか果たせない。
半分と言うのは、概要には2つの役割があり、その1つしか果たしていないということだ。
1つは前に言ったとおり本題を予め知ること。
もう1つもあまり強調しなかったが、本題を読んでいる時にわからなくなったら一旦話全体を整理するために使えること。
つまり長すぎては全くの無意味なのだ。
その両面性を持って漸くそれは概要と呼ぶに値する。
さて今度は見出しについて説明しよう。
見出しというとページの一番上に書いてあるものを思い浮かべるかも知れないが、ここではそうではない。
また最初の新聞を例にあげる。
さっきの記事には具体例として書いた他に2つの見出しがついている。
つまりこういうことなのだ。
長い記事では最初書いた「見出し→概要→本題」がより高度な構造になっており、その構造とは「大見出し→概要→(小見出し→本題)*n」という形だ。
見出しは大見出しと小見出しに分かれ、大見出しは最初の一回のみ登場し(つまりは一般に思う"ページの一番上に書いてあるもの"だ)、長い本題において話題転換を明示するために小見出しが設けられる。
大見出しにも小見出しにも共通して言えることは、見出しとは「これからこういうことについて話しますよ」と教えてくれるものであるということだ。
それらを踏まえた上で見出しと概要を端的に表すと以下のようになる。
見出し…「本題の話題を明示」
概要…「本題の内容の縮図」
 
さて、これで見出し・概要を理解した。
後は使うだけである。
使うのは案外に難しく、また状況次第では使わない方がいいことさえある。
予め本題の中身を自分で整理しきれていなければ見出し・概要を設定しようがないためだ。
そういった場合にこの手法は使えない。
逆に言えば本題をより深く理解できていなければ見出し・概要・本題のスタイルを使いこなせるようにはならない。
また、この手法は説明する時のみならず、話を聞くときにも有効だ。
本題のみをベラベラと話す相手に対し、自分でその話の見出し・概要を設定しながら聞くと案外にわかりやすくなるのだ。
 
この拙論が諸兄の言語生活において少しでも有意義な役割を果たせられるならば幸いである。